猿の惑星 創世記(ジェネシス)

猿の惑星」のエピソードゼロ的ストーリー。なんか評価が高いようなので、それなりの期待を胸に劇場へ。イオンシネマのレイトで観てきた。
なでしこジャパンの澤選手がコメントするCMがすごい。「こんなに泣けるとは思わなかった」「心の葛藤に共感した」と絶賛し、「マイベストムービー!」とまで言い切られたら、いろんな不安や負の予想があっても、期待の方が上回っちゃう。

しかし、現実はそう甘くない。実際のところ泣けなかったし、共感もあまりせず。これがベストムービーなら澤選手、今までどんな映画観てきたの?

まず、いいところを褒めておこう。21世紀のCGの進化はものすごい。ついには動物を完全に描けるようになってしまった。「ジュマンジ」の頃と比べると雲泥の差だ。本編では、一匹も本物を使っていないというから恐れ入る。

しかも描くのはただの動物ではない。ただでさえ知能の高い猿が、さらに高い知能を持ってしまうという設定だ。表情豊かなチンパンジーでなくてはいけない。アンディ・サーキスのモンキー・パフォーマンスが優れていたおかげで、繊細なシーザーの感情が完璧に表現されていた。

話の展開もスムーズだ。チンパンジーが知能を獲得し、人間に反旗を翻す経緯が無理なく無駄なく描かれている。シーザーとジェームズ・フランコの絆も愛情にあふれている。エンディングでは、人間が滅びゆく様子が世界地図で暗示されていて、その後猿たちが地球の支配者になることが容易に想像できる。

でも褒めるとしたらそれぐらいだ。ここからは辛口になる。まずは、本作が一線を越えてしまったと思われる点だ。

猿の惑星」の起源については、オリジナルシリーズですでに解明されている。「新・猿の惑星」でシーザーの親にあたるジーラとコーネリアスが現代にタイムスリップし、「猿の惑星 征服」では、人間の奴隷となっていた猿類が、シーザーの指揮の下反乱を起こす。そして時は流れて、1作目につながっていくのだ。

この展開があるにも関わらず、本作は新しい前日譚を作り上げてしまった。本当の始まりは今回の「ジェネシス」であり、それが「猿の惑星」へとつながり、タイムスリップした先はパラレルワールドだすれば、何とか説明がつかないこともない。そんな説明、本編のどこにもないけど。

でも、そこまでしてあの古典的名作をいじくる必要性はあるの? 昨今の何でもかんでもリメイクブームには辟易しているのだが、この映画がやっているのはさらにその上を行く。見方によっては、過去の作品の完全否定とも取れるからだ。そうまでしてこの作品を作りたい理由は、ひとつしか考えられない。金儲けだ。

オリジナルの映画を作る才能がない製作者たちは、ブームに乗って、かの名作をリメイクしようとした。しかし、数年前にティム・バートンが「リ・イマジネーション」したのがあって、またリメイクするにはちょっと早すぎる。そこで次に考えたのが、これまたよくあるエピソードゼロ方式だ。オリジナルシリーズはあるけれど、最新のCGを使ってそれなりのものを見せれば、批判もかわせるだろう。保険として、オリジナルへのオマージュも入れておけば、旧作のファンも喜ぶだろう。脚本家よ、その辺しっかり頼むぞ。

・・・偏屈な想像なのはわかってるけど、そう思っちゃったんだから仕方ない。作ってほしくなかったもの、視覚効果に物言わせたこんな映画。

もうひとつ気になることがある。これ観ちゃったら、オリジナルの「猿の惑星」のラストは、「ふーん」で終わるね。本作自体がネタばらしになってしまってるんだもの。これからの映画キッズは、あの衝撃を味わうことはできないのだ。いくら同じ会社だからって、過去の名作の価値をおとしめるような真似していいのかな。大いに疑問だ。

もっとも「猿の惑星」のDVDパッケージには、あの像が堂々と載っちゃってるけど。もう秘密を守る気なんてないのね、20世紀FOXさん。

本作の技術がすごいことは認める。でもその腕は、オリジナリティあふれる作品で発揮してほしい。偉大な先輩が築き上げた金字塔を、下から崩して別の建物を建てるようなこと、オレは望んでません。

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