クレイジー・ハート

2010年の主演男優賞と音楽賞を総なめにした人間ドラマ。DVD借りてきた。
なんと言ってもこの映画、ジェフ・ブリッジスの渋さにノックアウトされる。5度目のノミネートでついにオスカーを獲ったのは、アル中のカントリー歌手という役どころ。酒とタバコと女をこよなく愛す、破滅型の芸人だ。

過去の栄光があるといつまでも食べていけるのは、日本もアメリカも一緒みたい。新曲を書くのが面倒で、場末の酒場で昔のヒット曲を歌って歩く毎日。それでも根強いファンはいるもので、どこへ行ってもそこそこちやほやさるし、女もすり寄ってくる。地元のバンドとのリハも適当だし、ステージの最中に具合悪くなって外で吐いても文句は言われない。回数こなすのは大変だけど、それなりに自由な歌手生活だ。

彼の名前はバッド・ブレイク。本名を訊かれても「墓には本名が彫られるだろうが、それまではバッド・ブレイクだ」と言い放つ。無理やり訳すなら、「壊し屋悪太郎」ってとこか。そんな名前に誇りを持つ男が、品行方正なわけがない。飲酒運転も当たり前で、日本なら捕まってブタ箱行き確実だ。

そんな彼だから事故を起こしても特段驚かない。砂漠のど真ん中で車を横転させて、足の骨を折る重傷を負う。さらに検査を受けてみれば、いつ死んでもおかしくないと医者に言われる始末。そりゃそうだ、悪太郎なんだもの。

ボロボロの体を休めるため、深い仲になった女記者ジーンの家に転がり込む悪太郎。彼女の息子はこの不良じいちゃんにすっかり懐いて、平和な時間が過ぎていく。でもそんなのは長く続くわけないよね。

悪太郎の家にジーンが子連れで遊びに来る。ここで悪太郎やらかしちゃったね。息子の前では酒を飲まないって約束したのに、ついつい軽い気持ちでバーに入ったら、その間に息子が消えてしまう。狂乱するジーン。息子は無事見つかったものの、悪太郎への信頼はあっさり崩れ落ちてしまった。とっとと帰るジーンに、帰らないでとすがる悪太郎。無様でみじめだが、自業自得だ。同情の余地はない。

でもこの一件でめざめた悪太郎は、心を入れ替えてアル中を克服しようと努力を始めるのだ。やっぱ、これくらいのショックがないと人って変わらないんだろうね。それまで自分のことしか考えず、好き勝手に生きてきた男が、初めて他人のために生き様を変えようとする姿は、清々しく感じられた。

でも女って、一度冷めてしまうともう振り返らない生き物よね。本名を名乗るまでに真っ当になったというのに、ジーンは彼を門前払いにするのだ。彼女の傷も深いのはわかる。でもこのせつなさは何だろうね。何に代えてでも手に入れたいものが、指の間からするすると落ちていくこの辛さ。

でも彼は、その想いを歌にした。今や自分を追い抜いて売れっ子となったトミー・スウィートから頼まれて作った "The Weary Kind" は、ジーン親子への深い愛情にあふれた心に沁みる名曲だ。本作の成否は、ある意味この曲の出来にかかっていた。そしてそれは見事に成功した。音楽映画としても最高のクライマックスだった。

演技だけでなく歌にも魂を込めたジェフ・ブリッジスが賞賛されるのは当然だが、他のキャストもなかなか味わい深いものがあった。

筆頭はジーンを演じたマギー・ギレンホール。パッと見がおばさん顔で全く好みではないのだが、不思議と演技をしている姿は魅力的で、なぜか癒されるのよ。バッドがほれ込んでしまうのもわかる。

バッドの親友であるバーのマスターは、名優ロバート・デュヴァル。出番はそう多くはないものの、出てくれば余裕綽々の名演技で画面を引き締めてくれる。今年で80歳、芸歴50年の超ベテランだが、毎年コンスタントにスクリーンで顔を見られるのがうれしい。これからも長生きして、元気な姿を見せてください。

どう見ても野心満々顔のコリン・ファレルが、バッドを慕うトミー・スウィートを好演していたのも驚き。バッドは何かとトミーを避けたがってたけど、すごくいいヤツじゃん。大ステージで歌う姿も堂々としたもんでした。

どん底から這い上がり、見事復活を果たしたバッド。晴れ晴れとした表情の彼に、記者として駆けつけたジーンが声をかける。彼女には別のいい人がいるようだが、そんな彼女の幸せをバッドは素直に祝福する。それぞれの過去も傷跡も全部認めあった上で、未来の話をする二人の姿が深く静かに心に残るラスト。これぞ大人の映画だ。しばらく余韻に浸ってました。

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子供の頃から映画が大好き!いっぱい観てきたつもりですが、まだまだ勉強不足です。毎日映画だけ観て暮らすのが夢。


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