ジャーロ

映画はジャンルを問わず観る方だが、アルジェント監督の作品はほとんど未見。かろうじて「サスペリア」をTVで観たぐらいだ。しかもかなり昔に。勉強不足を痛感する。
本作は有名スターを使ってるので、初心者にも入り込みやすいに違いない。ブロディはアカデミー俳優だし、エマニュエル・セニエと言えば「フランティック」を思い出す。エキゾチックな攻撃的フレンチ美女だったなあ。あれから20年以上経ち、美貌の衰えは隠せないけど、スタイルや身のこなしのよさは健在だ。20年前はセイナーって書かれてたっけ。フランス人だもの、やっぱセニエよね。
謎のタクシー殺人鬼によって連れ去られたモデルの姉がセニエ。彼女が助けを求めるのがブロディ演じるエンツォ警部だ。別の犠牲者が死ぬ直前に残した「黄色」の言葉によって、黄疸患者の線で探っていくと、聞き込みの病院でいかにも怪しく逃げる男を発見。その場では逃がしてしまうものの、カルテを手に入れて案外あっさり犯人にたどり着く。
「羊たちの沈黙」を想起させるミスリードがあったり、一度は逃げおおせた妹が結局また捕まってしまったり、犯人が姉のところにも現れて逃亡の手助けをさせようとしたり、なかなか先読みさせないクライマックスは面白かった。エンツォ警部のあの告白にも度肝抜かれたし。気持ちはわかるんだが、いくら昔話でも殺人は引くわ。すごすぎてリアクションに困る。
問題は、そこからラストにかけてだ。お姉さんを助けるために、体張ってがんばったエンツォ警部。なのに、犯人が死んじゃって妹の居場所が聞けなくなったと言って、助けたお姉さんから散々罵倒されるのだ。しまいには「人殺し」とまで言われる始末。確かに人を殺した過去はあるけど、今回の流れであそこまで言われる筋合いはないよなあ。あえて罵声を背中に浴びつつ去っていくエンツォ警部が、不憫で仕方なかった。
じゃあ妹は死んだのかというと違う。ボンクラ警備員が駐車場で変な音に気づいて、車の下の血だまりを見つけるのよね。そこで映画は終了。ずいぶんと中途半端な幕切れだわ。物足りないことこの上ない。
これが巨匠の仕事だと言われると、ちょっと納得が行かない。納得が行かないけれども、気になっていたことがあり、ちゃんとエンドクレジットまで観ることにした。
映画の冒頭から登場する犯人のタクシー運ちゃん。バックミラーに映る眼が、ブロディの眼に見えたのだ。あれ?ブロディは犯人役なの?
その後ブロディはちゃんと警部として登場。犯人も醜い風貌をさらすが、よくよく見ると特殊メイクっぽい感じもする。まさかブロディ二役?
でも結局最後まで、それらしき設定は出てこなかった。だからエンドクレジットでキャストを確認したかったのだ。そして犯人役の俳優の名前を見ると「バイロン何とか」と書いてある。あ、やっぱ違った。そりゃそうだよね。そんなトリッキーなストーリーじゃないんだから。
そう思って鑑賞終了し、その後IMDBの本作のページを見てみた。そこにはこう出ていた。
Adrien Brody ... Inspector Enzo Avolfi / Giallo (as Byron Deidra)
あら、やっぱりそうだったのか。さらによく見ると、この "Byron Deidra" って俳優名も "Adrien Brody" のアナグラムということに気づいた。これは一体何を意図してるの?
あんな対極的な役どころを一度に演じてしまうなんて、さすがブロディ。アカデミー俳優の面目躍如だ。でも、今ひとつ納得が行かないわ。二役演じる必然性はゼロだからね。唯一考えられる理由は「何か面白いんじゃね?」しかない。
アルジェントってそんな思いつきで映画作る人なの? そうなんだろうね。こっちが勝手に巨匠イメージ作ってるだけで、実際はただ面白いことが大好きな、ちょっと変わった爺さんなんだろう。
昨日誕生日を迎え、今年71歳のアルジェント監督。新作は「ドラキュラ」の3Dなんだって。「老いては益々壮んなるべし」を地で行く彼の作品を、もっと観たくなった。昔の映画も借りてこなくては。
そのとおりと思ったら、ポチッ!
本作は有名スターを使ってるので、初心者にも入り込みやすいに違いない。ブロディはアカデミー俳優だし、エマニュエル・セニエと言えば「フランティック」を思い出す。エキゾチックな攻撃的フレンチ美女だったなあ。あれから20年以上経ち、美貌の衰えは隠せないけど、スタイルや身のこなしのよさは健在だ。20年前はセイナーって書かれてたっけ。フランス人だもの、やっぱセニエよね。
謎のタクシー殺人鬼によって連れ去られたモデルの姉がセニエ。彼女が助けを求めるのがブロディ演じるエンツォ警部だ。別の犠牲者が死ぬ直前に残した「黄色」の言葉によって、黄疸患者の線で探っていくと、聞き込みの病院でいかにも怪しく逃げる男を発見。その場では逃がしてしまうものの、カルテを手に入れて案外あっさり犯人にたどり着く。
「羊たちの沈黙」を想起させるミスリードがあったり、一度は逃げおおせた妹が結局また捕まってしまったり、犯人が姉のところにも現れて逃亡の手助けをさせようとしたり、なかなか先読みさせないクライマックスは面白かった。エンツォ警部のあの告白にも度肝抜かれたし。気持ちはわかるんだが、いくら昔話でも殺人は引くわ。すごすぎてリアクションに困る。
問題は、そこからラストにかけてだ。お姉さんを助けるために、体張ってがんばったエンツォ警部。なのに、犯人が死んじゃって妹の居場所が聞けなくなったと言って、助けたお姉さんから散々罵倒されるのだ。しまいには「人殺し」とまで言われる始末。確かに人を殺した過去はあるけど、今回の流れであそこまで言われる筋合いはないよなあ。あえて罵声を背中に浴びつつ去っていくエンツォ警部が、不憫で仕方なかった。
じゃあ妹は死んだのかというと違う。ボンクラ警備員が駐車場で変な音に気づいて、車の下の血だまりを見つけるのよね。そこで映画は終了。ずいぶんと中途半端な幕切れだわ。物足りないことこの上ない。
これが巨匠の仕事だと言われると、ちょっと納得が行かない。納得が行かないけれども、気になっていたことがあり、ちゃんとエンドクレジットまで観ることにした。
映画の冒頭から登場する犯人のタクシー運ちゃん。バックミラーに映る眼が、ブロディの眼に見えたのだ。あれ?ブロディは犯人役なの?
その後ブロディはちゃんと警部として登場。犯人も醜い風貌をさらすが、よくよく見ると特殊メイクっぽい感じもする。まさかブロディ二役?
でも結局最後まで、それらしき設定は出てこなかった。だからエンドクレジットでキャストを確認したかったのだ。そして犯人役の俳優の名前を見ると「バイロン何とか」と書いてある。あ、やっぱ違った。そりゃそうだよね。そんなトリッキーなストーリーじゃないんだから。
そう思って鑑賞終了し、その後IMDBの本作のページを見てみた。そこにはこう出ていた。
Adrien Brody ... Inspector Enzo Avolfi / Giallo (as Byron Deidra)
あら、やっぱりそうだったのか。さらによく見ると、この "Byron Deidra" って俳優名も "Adrien Brody" のアナグラムということに気づいた。これは一体何を意図してるの?
あんな対極的な役どころを一度に演じてしまうなんて、さすがブロディ。アカデミー俳優の面目躍如だ。でも、今ひとつ納得が行かないわ。二役演じる必然性はゼロだからね。唯一考えられる理由は「何か面白いんじゃね?」しかない。
アルジェントってそんな思いつきで映画作る人なの? そうなんだろうね。こっちが勝手に巨匠イメージ作ってるだけで、実際はただ面白いことが大好きな、ちょっと変わった爺さんなんだろう。
昨日誕生日を迎え、今年71歳のアルジェント監督。新作は「ドラキュラ」の3Dなんだって。「老いては益々壮んなるべし」を地で行く彼の作品を、もっと観たくなった。昔の映画も借りてこなくては。
そのとおりと思ったら、ポチッ!

Comment
コメントの投稿
Trackback
http://creview.blog67.fc2.com/tb.php/966-7214bd4e