ぼくのエリ 200歳の少女

誰にでも12歳だった頃はあるし、同い年ぐらいの女の子に恋心を抱いたことはあるはず。だから、こういう映画を嫌いと言う人は、あまりいないんじゃないかな。まあ、明らかにいじめっ子だったヤツには、共感してほしくはないけど。
オレも昔は12歳だったし、同級生の女の子を好きだった思い出がある。クラスにはいつも子分を引き連れてえらそうにしてるガキ大将がいたし、そいつに嫌がらせを受けたこともある。友達はちゃんといたので、オスカーほど孤独じゃなかったけど、彼の気持ちは痛いくらいにわかる。北海道だから、冬はあんな感じだしね。
そんな彼の前に、外見12歳、中身約200歳の少女エリが現れる。オスカーからすれば、エリは隣りに越してきたミステリアスな女の子。ルービック・キューブを簡単に完成させるところに惹かれるあたり、子供らしい初恋で微笑ましいかぎりだ。
だけど、エリにとってオスカーは相当年下のガキんちょのはず。夜の中庭で出会った相手が、負のオーラ出しまくって木にナイフ突き刺してたから、気になったんだろうね。社会から疎外された二人に、惹かれあうものがあったとしても不思議ではない。
ただ男ってのは、いくつであっても調子に乗る生き物なんだな。「血の契り」を交わそうなんて、バカなこと考えるから取り返しのつかないことになる。エリは誘惑に耐えられずに、床に落ちた血だまりに顔をつけてすすってしまう。このままだとオスカーを襲いかねないと、自分からその場を去るエリ。バカ顔で取り残されるオスカー。
相手がヴァンパイアだと知れば、距離を置きたくなっても仕方ない。でも、オスカーの拒絶の仕方は、子供らしく純粋で子供ゆえに残酷だ。金を差し出したエリに「殺した人の金だろ」と決めつけて去っていく。その時のエリの表情といったら…。
後日、オスカーの部屋を訪ねたエリに、オスカーはちょっと意地悪する。そこで見せるエリの「血の抗議」には、さすがのオスカーもオレも参った。あれやられたら降参するしかない。エリはやはりオスカーに自分と同じものを感じていて、自分もオスカーに受け入れてほしいと思っていたのだ。子供の淡い恋心とはちょっと違うけど、ヴァンパイアならではのせつない願いに心を打たれるシーンだった。
一方、エリによって友人を二人も亡くした男が、犯人を追ってエリの部屋に侵入。風呂場で眠るエリを見つけるが、オスカーの声によってエリは助けられる。もちろん男は無残な死体に。この一件でエリは町を去っていく。最後に交わした血のキスの、なんとせつないことか。
ラストは個人的にはちょっといただけない。いじめっ子の兄貴が出てきて、オスカーを水に沈めるのだが、間一髪エリが現れて全員メッタ切りの刑に処すのだ。確かにスカッとはするが、あれだとエリはいつまでもオスカーを守らなきゃいけないし、大体さっきの別れはなんだったの?ってことになる。
やはりあそこは、オスカー自力で反撃してほしかった。エリがいなくても一人でやっていけるという姿を見せてほしかった。それを陰でエリが見守ってるんなら、いいラストになったんじゃないだろうか。
結局、エリとオスカーは別れずに、どこか旅に出たみたい。昼の間、エリは大きなバッグの中に隠れて。二人の間をつなぐのはあのモールス信号ってわけだ。これはこれで味わい深いエンディングではあるわね。12歳同士の絶対成就しない恋愛だと思われたが、意外にも最後は温かい終わり方だった。
オスカーを演じた子役もよかったが、エリ役の女の子にはシャッポを脱ぎました。決して美少女ではないんだけど、かげりのある表情が気になってしまう。中身が200歳であることを確かに感じさせる表現力は、ただものではない。彼女の起用が本作の成功のカギと言ってもいい。
これだけ話題になればハリウッドが触手を伸ばすのは当然の成り行き。すでに昨年本国で公開された「モールス」は、例のごとくスティーヴン・キングが大絶賛している。日本公開は来月だが、地元のシネコンではまずかからない。またDVD待ちかな。主演の女の子は、オリジナルよりもビジュアル重視のようで、こちらも期待できそう。今から楽しみだ。
<7/17追記>
記事投稿後、おせっかいさんからのコメントに驚いた。
え?エリは男の子だって?そんなバカな…
あのぼかしは、少女の股間を映しちゃまずいからだと思っていた。しかしノーカット版で映っていたのは、男性器を去勢した痕跡らしい。その画像もネットで確認しました。確かに、横一文字に傷跡があるよ…。
これで、エリが何度も「女の子じゃない」と否定していたのが理解できた。「もう人間じゃないから、女の子じゃない」って言ってるものと深読みしてたけど、言葉どおりの意味だったのね。
じゃあ、あの場面ぼかしかけちゃダメじゃんか。それ以前に、「200歳の少女」という嘘題つけちゃダメだろ。この映画配給したのはどこ? ショウゲート? 一体何考えてんの? 責任者出て来い! これはちょっとひどすぎる。
上記のレビュー、的外れもいいところですな。途中まではオスカーもエリが女の子だと思ってたわけだからいいにしても、あのぼかしの後はちょっと複雑だね。エリを助けたのは愛情じゃなくて友情? でも、エリって名前は外国でも女の子につけるもんじゃないの? 見た目も女の子っぽかったし。あれにも何か理由があるのかしらん。もうわけわかりません。
やっぱりエリは女の子の方が、話がシンプルでわかりやすかった。ハリウッド版のリメイクは、その辺どうなってるのかな。オリジナルに忠実なら男の子にするんだろうが、女の子で通してくれてもいいよ。そうしたら、リメイクの方が好きになるかも。
<7/18追記>
ぼかしと副題についてさらに調べると、次のようなことがわかった。
配給会社のショウゲートは、映倫のぼかし入れ指示に相当抵抗したが、結局従わざるをえなかったようだ。副題をつけたのはショウゲートで、賛否両論あるのは予想していたが、これで押し通したそうだ。
ぼかしについては、映倫に問題がある。映画を冒涜するのが彼らの仕事なら、即刻自分で手首を切るか、国外に脱出して二度と日本には帰ってこないでいただきたい。
副題については、ぼかしが入ってしまって重要なポイントが観客に伝わらないことが確定した時点で、観客を完全にミスリードするタイトルはつけるべきではないはず。それをあえて断行したショウゲートの担当者は、上記映倫と同罪である。同様の処置を希望する。
こんな奴ら絶対に許したくないわ。
そのとおりと思ったら、ポチッ!
オレも昔は12歳だったし、同級生の女の子を好きだった思い出がある。クラスにはいつも子分を引き連れてえらそうにしてるガキ大将がいたし、そいつに嫌がらせを受けたこともある。友達はちゃんといたので、オスカーほど孤独じゃなかったけど、彼の気持ちは痛いくらいにわかる。北海道だから、冬はあんな感じだしね。
そんな彼の前に、外見12歳、中身約200歳の少女エリが現れる。オスカーからすれば、エリは隣りに越してきたミステリアスな女の子。ルービック・キューブを簡単に完成させるところに惹かれるあたり、子供らしい初恋で微笑ましいかぎりだ。
だけど、エリにとってオスカーは相当年下のガキんちょのはず。夜の中庭で出会った相手が、負のオーラ出しまくって木にナイフ突き刺してたから、気になったんだろうね。社会から疎外された二人に、惹かれあうものがあったとしても不思議ではない。
ただ男ってのは、いくつであっても調子に乗る生き物なんだな。「血の契り」を交わそうなんて、バカなこと考えるから取り返しのつかないことになる。エリは誘惑に耐えられずに、床に落ちた血だまりに顔をつけてすすってしまう。このままだとオスカーを襲いかねないと、自分からその場を去るエリ。バカ顔で取り残されるオスカー。
相手がヴァンパイアだと知れば、距離を置きたくなっても仕方ない。でも、オスカーの拒絶の仕方は、子供らしく純粋で子供ゆえに残酷だ。金を差し出したエリに「殺した人の金だろ」と決めつけて去っていく。その時のエリの表情といったら…。
後日、オスカーの部屋を訪ねたエリに、オスカーはちょっと意地悪する。そこで見せるエリの「血の抗議」には、さすがのオスカーもオレも参った。あれやられたら降参するしかない。エリはやはりオスカーに自分と同じものを感じていて、自分もオスカーに受け入れてほしいと思っていたのだ。子供の淡い恋心とはちょっと違うけど、ヴァンパイアならではのせつない願いに心を打たれるシーンだった。
一方、エリによって友人を二人も亡くした男が、犯人を追ってエリの部屋に侵入。風呂場で眠るエリを見つけるが、オスカーの声によってエリは助けられる。もちろん男は無残な死体に。この一件でエリは町を去っていく。最後に交わした血のキスの、なんとせつないことか。
ラストは個人的にはちょっといただけない。いじめっ子の兄貴が出てきて、オスカーを水に沈めるのだが、間一髪エリが現れて全員メッタ切りの刑に処すのだ。確かにスカッとはするが、あれだとエリはいつまでもオスカーを守らなきゃいけないし、大体さっきの別れはなんだったの?ってことになる。
やはりあそこは、オスカー自力で反撃してほしかった。エリがいなくても一人でやっていけるという姿を見せてほしかった。それを陰でエリが見守ってるんなら、いいラストになったんじゃないだろうか。
結局、エリとオスカーは別れずに、どこか旅に出たみたい。昼の間、エリは大きなバッグの中に隠れて。二人の間をつなぐのはあのモールス信号ってわけだ。これはこれで味わい深いエンディングではあるわね。12歳同士の絶対成就しない恋愛だと思われたが、意外にも最後は温かい終わり方だった。
オスカーを演じた子役もよかったが、エリ役の女の子にはシャッポを脱ぎました。決して美少女ではないんだけど、かげりのある表情が気になってしまう。中身が200歳であることを確かに感じさせる表現力は、ただものではない。彼女の起用が本作の成功のカギと言ってもいい。
これだけ話題になればハリウッドが触手を伸ばすのは当然の成り行き。すでに昨年本国で公開された「モールス」は、例のごとくスティーヴン・キングが大絶賛している。日本公開は来月だが、地元のシネコンではまずかからない。またDVD待ちかな。主演の女の子は、オリジナルよりもビジュアル重視のようで、こちらも期待できそう。今から楽しみだ。
<7/17追記>
記事投稿後、おせっかいさんからのコメントに驚いた。
え?エリは男の子だって?そんなバカな…
あのぼかしは、少女の股間を映しちゃまずいからだと思っていた。しかしノーカット版で映っていたのは、男性器を去勢した痕跡らしい。その画像もネットで確認しました。確かに、横一文字に傷跡があるよ…。
これで、エリが何度も「女の子じゃない」と否定していたのが理解できた。「もう人間じゃないから、女の子じゃない」って言ってるものと深読みしてたけど、言葉どおりの意味だったのね。
じゃあ、あの場面ぼかしかけちゃダメじゃんか。それ以前に、「200歳の少女」という嘘題つけちゃダメだろ。この映画配給したのはどこ? ショウゲート? 一体何考えてんの? 責任者出て来い! これはちょっとひどすぎる。
上記のレビュー、的外れもいいところですな。途中まではオスカーもエリが女の子だと思ってたわけだからいいにしても、あのぼかしの後はちょっと複雑だね。エリを助けたのは愛情じゃなくて友情? でも、エリって名前は外国でも女の子につけるもんじゃないの? 見た目も女の子っぽかったし。あれにも何か理由があるのかしらん。もうわけわかりません。
やっぱりエリは女の子の方が、話がシンプルでわかりやすかった。ハリウッド版のリメイクは、その辺どうなってるのかな。オリジナルに忠実なら男の子にするんだろうが、女の子で通してくれてもいいよ。そうしたら、リメイクの方が好きになるかも。
<7/18追記>
ぼかしと副題についてさらに調べると、次のようなことがわかった。
配給会社のショウゲートは、映倫のぼかし入れ指示に相当抵抗したが、結局従わざるをえなかったようだ。副題をつけたのはショウゲートで、賛否両論あるのは予想していたが、これで押し通したそうだ。
ぼかしについては、映倫に問題がある。映画を冒涜するのが彼らの仕事なら、即刻自分で手首を切るか、国外に脱出して二度と日本には帰ってこないでいただきたい。
副題については、ぼかしが入ってしまって重要なポイントが観客に伝わらないことが確定した時点で、観客を完全にミスリードするタイトルはつけるべきではないはず。それをあえて断行したショウゲートの担当者は、上記映倫と同罪である。同様の処置を希望する。
こんな奴ら絶対に許したくないわ。
そのとおりと思ったら、ポチッ!

Comment
[709] >おせっかいさん
[710] レスありがとうございます。
コメント承認ができなかったのは私が非公開コメントの項目にチェックを入れたからかもしれません。
一部ブログでは「外国ではエリ(またはイーライ)は男の名」と書いていますが実際はどうなんでしょうね……。原作では、エリと名乗っているものの本名は「エライアス」ということでした。
エリの年齢について一応原作では「生まれたのは二百二十年まえ」となっています。邦題の「200歳」は、「220歳では語呂が悪いから200歳ということにしてしまえ!」ということでしょうか。
リメイクのほうは、どうも最初から女の子という設定のようです。ただ、「女の子じゃない」という台詞がくどいくらい強調されているという指摘もあり(日本語字幕では「普通の女の子じゃなくても」となっているようですが)…オリジナルや原作のファンに配慮して、男の子という解釈も成り立つようにということかもしれません(?)。アメリカでは少年愛や児童性愛を連想させる設定は難しそうです。主人公たちの年齢の変更も検討されたそうですが、それには監督が抵抗したみたいですね。
一部ブログでは「外国ではエリ(またはイーライ)は男の名」と書いていますが実際はどうなんでしょうね……。原作では、エリと名乗っているものの本名は「エライアス」ということでした。
エリの年齢について一応原作では「生まれたのは二百二十年まえ」となっています。邦題の「200歳」は、「220歳では語呂が悪いから200歳ということにしてしまえ!」ということでしょうか。
リメイクのほうは、どうも最初から女の子という設定のようです。ただ、「女の子じゃない」という台詞がくどいくらい強調されているという指摘もあり(日本語字幕では「普通の女の子じゃなくても」となっているようですが)…オリジナルや原作のファンに配慮して、男の子という解釈も成り立つようにということかもしれません(?)。アメリカでは少年愛や児童性愛を連想させる設定は難しそうです。主人公たちの年齢の変更も検討されたそうですが、それには監督が抵抗したみたいですね。
コメントの投稿
Trackback
http://creview.blog67.fc2.com/tb.php/936-cc0fc90e
■映画『ぼくのエリ 200歳の少女』
いわゆるボーイ・ミーツ・ガールな少年の成長物語かと思っていたら、大きく裏切られる北欧ヴァンパイア・ムービー『ぼくのエリ 200歳の少女』。
いじめられっこの孤独な少年とエキゾチックでミステリアスなヴァンパイア少女の切なくも美しい恋…というような表現は、こ...
コメント返信で下記表示するようにしますね。
で、この件知らなかったので、驚きました。
本筋ど真ん中に関することなので、記事本文に追記します。
教えていただいてありがとうございました。
(決して「おせっかい」ではないですよ)
> エリが実は少女でも老婆でもなく男の子であることは御存じでしょうか?
> 「ぼくのエリ モザイク」で要検索です
> この映画が公開された国の中、日本だけで捩じれた現象が起きています