レバノン

一昨年のヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲ったイスラエル映画。DVD借りてきた。
ほぼ全編戦車の中という異色の密室劇。鋼鉄の躯体に守られてはいるものの、外は侵攻初日のレバノン、銃弾が飛び交う戦場ど真ん中だ。

乗り込んだのは指揮官のアシ、反抗的な弾込め係のヘルツル、へなちょこ砲撃主のシムリック、マザコン操縦士のイーガルの以上4名。アシはともかく、残り3名は「お前らそれでも軍人か!」と歯を食いしばらせたくなるダメダメ兵士ばかり。

見張りを命じられたのに文句ばかり吐きまくるヘルツルに、冒頭から本気でイライラさせられる。上官の命令には従うもんじゃないの? のちにアシより年上であることが判明して、使いづらさは倍増。こんなヤツは軍法会議にかけてしまえ。

次の疫病神はシムリック。敵が向かって来たというのに、臆病風に吹かれて引き金を引けず、外で戦っていた自軍の兵士が死亡。人を殺したくない気持ちはわかるが、その代償は大きかった。さらに続けて、敵ではないことがわかっている車に砲弾打ち込んで、民間人と多数のニワトリの命を散らす。混乱しまくってたとはいえ、こいつの罪は重いぞ。悪気はなかったでは済まん。

イーガルはイーガルで、隊の上官に「自分の無事を母親に伝えてくれ」なんて言い出す始末。指揮官アシの受難は、いくら同情しても足りないくらいだ。

そんな三流兵士たちを乗せて、戦車はレバノンの街を行く。中から見えるのは、丸い小さなスコープに切り取られた景色だけだ。

テロリストが民間人の一家を人質にして、イスラエル軍と交戦を開始。命からがら逃げてきた妻が、娘を返せと銃を持った兵士に迫る。勢いで服を剥ぎ取られ、瓦礫の中を裸で歩き回る女。スコープの目前で立ち止まり、こちらを睨みつける女の表情は、言葉で言い表すことができない。

シリア人の撃ったバズーカの直撃を受け、クルトンと小便まみれになる車内。捕らえたシリア人を乗せて、内部は不穏な空気に包まれる。4人の関係も微妙に変化を見せる。強気に出るヘルツルに対し、自信を失いだすアシ。

口火を切ったのはイーガルだった。彼の母親トークのあと、シムリックが高校時代の下ネタ系すべらない話を披露し、笑いとともにおぼろげな連帯感が生まれ始める。ファランヘ兵に脅されて暴れるシリア人をみんなで取り押さえたのも、仲間意識の醸成に一役買ったみたい。共通の問題は、一体感を生むのね。

何かを隠す上官に不信を抱き、緊急回線にアクセスするヘルツル。ミッションは初めから穴だらけで、戦車を見捨てても自分は助かろうとしているのがわかり、いよいよ4人は結束を固める。静かにひげをあたって、指揮官としての決意を新たにするアシが圧巻だった。

上官はとっとと安全な場所へ逃げてしまい、シリア人を連れ出せないことがわかったファランヘ兵はどこかに消える。聞こえてくる不気味な民俗音楽。かからないエンジン。そして何者かの襲撃。あせる4人。

やっとエンジンがかかって走り出す戦車。同時に反撃も可能となり、アシの矢継ぎ早の指令の下、敵陣を駆け抜けながらの銃撃戦となる。そして、もう少しで抜け出せるという時に食らった直撃弾。犠牲になったのはイーガル。無線がつながった上官からの、「母親に無事を伝えたぞ」の言葉が空しかった。

戦車を止めてハッチを開くと、そこはオープニングで登場した一面のひまわり畑。その平和そうな風景の中に、戦火を逃げ延びた満身創痍の戦車がポツンとたたずむ。このコントラスト。戦争って、一体何なの?

脚本も書いたサミュエル・マオズ監督は、実際にレバノン戦争でイスラエル軍に従事し、その経験を元にこの映画を作ったらしい。戦場描写がリアルなのもうなずける。4人の力関係が変化していく過程も秀逸だ。戦争映画としても人間ドラマとしても見事な出来栄え。緊張感の途切れない90分だった。

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子供の頃から映画が大好き!いっぱい観てきたつもりですが、まだまだ勉強不足です。毎日映画だけ観て暮らすのが夢。


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