瞳の奥の秘密

2009年のアカデミー賞外国語映画賞に輝いたアルゼンチン映画。DVD借りてきた。
アルゼンチン映画って普段あんまり触れる機会がない。機会がないだけで本当はいっぱいあるはず。だからこんな秀作が出てきてもおかしくないのだが、これだけ完成度が高いとやっぱりちょっと驚くね。

25年前に終わった事件を振り返るだけかと思ったら、まだ明らかになってない真相があったり、25年ものあいだ引きずってる想いがあったりする。それをただの回想ではなく、自伝的小説の執筆という手段を使うのが斬新だ。

ミステリーとしても秀逸だが、そこに成熟した大人の恋愛を絡ませるのが憎い。年下の女性上司との秘めた恋模様は、じれったくてもどかしくて、気づくと完全に感情移入してました。

釈放されたゴメスからの報復から逃れるため、地方へ向かう列車に乗り込むベンハミン。見送りに来たイレーネは、「オレと一緒に来い」って言ってほしかったに違いない。もし言われたら、今の地位もエンジニアとの婚約も捨てて、ベンハミンについていったはずだ。

でもそんなこと無理だよな、ベンハミンには。今生の別れになるかもしれないってのに、唇にキスさえできないんだから。それをそのまま小説に書いて、25年後にイレーネから投げられた言葉が「いくじなし」。思わず苦笑いしちゃいました。

過去が忘れられず、過去を引きずり、過去に縛られ続ける男たち。ベンハミンはもちろん、美人の若妻を殺されたモラレスもそう。さらにいうなら、幼馴染に異常な愛情を持ち続けて犯行に及ぶゴメスだってそうかもしれない。どうして男って、こうなんかね。「女々しい」とは、男のためにある言葉だと思うよ。

ゴメスを本当に終身刑にしたモラレスを見て、ベンハミンどう思ったのかな。「愛を貫くって大事だな」なのか、「過去に縛られるとロクなことがないな」なのか。彼の中で何かが変わったのは間違いない。勢い込んでイレーネを訪れ、未来に向けて一歩を踏み出すベンハミン。

相当の社会的地位にあって、旦那も子供もいる女性が、あの年齢で別の男に走るなんて、現実ではありえない。だから本作のラストは、ある意味男性の願望であり、男性にとってのファンタジーである。でも、夢を見せてくれるのが映画だからね。ベンハミン、幸せになってほしいもんです。

主役から脇役にいたるまで、出演者たちの演技はまさに絶品。四半世紀の時の流れを表現したのは、見事なメイクのおかげもあるが、それだけじゃない。タイトルどおり、瞳で心を語っていました。これぞ大人の映画だ。

本作は撮影も素晴らしい。サッカー場の空撮に始まって、カメラが観客席に降り立っただけでも驚きなのに、さらにゴメスの発見・追跡・逮捕までなんとワンカット。特撮の力も借りてるんだろうが、久しぶりに度肝を抜かれた。列車で去るベンハミンを窓越しに撮った場面、追いかけるイレーネが小さく映りこんでるのも印象的だった。

監督のフアン・ホセ・カンパネラは、アルゼンチン本国では実績のある人らしい。名前ぐらい覚えておかなきゃ。ぜひ過去の作品も観れるようにしてほしいもんです。

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子供の頃から映画が大好き!いっぱい観てきたつもりですが、まだまだ勉強不足です。毎日映画だけ観て暮らすのが夢。


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