ザ・タウン

予告編で流れる批評家筋の絶賛がすごい。「今、最も見るべき1本」「数十年に1本のクライム・ドラマの傑作」「本年度の最高傑作」とくれば、期待するなと言う方が難しい。イオンシネマのレイトで鑑賞してきた。
結論からいうと、期待させすぎ。いいところも沢山あるので、普通に観たらそれなりに満足できる出来なんだけど、あおられすぎたのでそうはならなかった。

一番納得できなかったのは、ベン・アフレック演ずる主役のダグだ。興奮気味の強盗仲間を冷静に諌めたり、人質になった女支店長を守ったり、正体がバレた後も女への愛を貫こうとしたり、全編これいいヤツ。だけどそんないいヤツが、一方で強盗を働いたり、女に嫌がらせする男をボコボコにしたり、花屋の男たちを撃ち殺したりするのよ。小説ならあまり気にならないのだろうが、映像で見せられるとどうしても違和感をぬぐえない。もちろん共感もできない。これは致命傷だ。

ボストンのチャールズタウンがどれくらいの街なのかわからないが、何度も強盗を働いても捕まらないのも解せない。警察がダメダメなんだろうけど、いくらそうだからってマークされてる中でまたやるかい?あまりに警戒心がなさすぎる。それなりの金を稼いでるんだから、しばらくおとなしくしてればいいのに。

トラウマになるほど怖い思いをしたのに、ダグの正体を知った後も顔を合わせられるクレアも理解できない。確かに最初は完全拒否だったが、その後は仏頂面しつつも相手してる。どんだけ惚れちゃったのよ。バリバリのキャリアウーマンと揺れる乙女心って、よっぽどじゃないと両立しないと思うんだが。

この3点が大きすぎて、どうしても映画にのめりこめなかった。冒頭の賛辞を送ることはオレには不可能だ。

逆によかったのは脇を固める面々。筆頭は「ハート・ロッカー」が記憶に新しいジェレミー・レナーだ。すぐにカッとなって暴力的になるジェム。常に暴発寸前のショットガンのようなアブナさは目が離せない。クライマックスはベン・アフレックもかすむほどの熱演で、2年連続のオスカーノミネートも納得できる。

女性陣では、ヒロインのクレアより、ダグに恋心を寄せる子持ちの娼婦クリスタの方がインパクト大。単純にキレイだからそれだけで注目しちゃうけど、後半ダグに詰め寄ってキレる彼女には寒気が走りました。新星ブレイク・ライヴリー、まだ23歳であの色気はすごい。今後が楽しみな女優がまた一人増えたね。

強盗一味を追うFBI捜査官を演じたジョン・ハムも、知能戦に強いキャラが印象的だった。あんなに頭がいいのに、なんであんな大胆に動き回る連中を捕まえられないんだろう? 矛盾を感じるところだ。

花屋を演じたピート・ポスルスウェイトの存在感もすごい。すっかり痩せこけた風貌が、逆に凄みを感じさせるのよ。今年惜しくもこの世を去ったが、享年65歳というのも驚く。見た目75歳といわれてもおかしくないんだもの。名優に合掌。

日本ではあまり作られない、銀行強盗ものというジャンル。アメリカでは時々出てくるので「ホンマかいな」と思っていたが、実際によく起こるのね。「お金がたくさんあるはずだから狙ってやれ」なんて、どんだけ短絡的な犯行だと思うが、これがアメリカなのだ。おっかないところだ。日本に生まれてよかったわ。

そのとおりと思ったら、ポチッ!

Comment

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

Trackback

http://creview.blog67.fc2.com/tb.php/861-696db88c

«  | HOME |  »

タイトル一覧/記事検索


最新記事


記事ランキング

アクセス解析


最新トラックバック


最新コメント


カテゴリ


プロフィール

Tao

Author:Tao
性別:♂
子供の頃から映画が大好き!いっぱい観てきたつもりですが、まだまだ勉強不足です。毎日映画だけ観て暮らすのが夢。


リンク



【BDもDVDもBOXで!】


【あの映画をお手元に!】