CINEMA正直れびゅ<ネタバレあり>
甘口でも辛口でもない「正直れびゅ」。基本的にネタバレ全開。責任持てません。持ちません。

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子供の頃から映画が大好き!いっぱい観てきたつもりですが、まだまだ勉強不足です。毎日映画だけ観て暮らすのが夢。

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紀子の食卓

2008/03/09(日) 15:00
「自殺サークル」に続いて、園子温監督作品をDVDで連続鑑賞。

「自殺サークル」の続編とでも言うべき本作では、新宿駅女子高生集団自殺の真相が描かれる。前作では広げっぱなしの大風呂敷が収拾つかないままになっていたのに、本作では黒幕が明確になっている。学芸会やってるような子供たちや、怪しいジャリタレ「デザート」については全く触れられてないので、辻褄合わないような気もするが、あんまり気にならない。本作の主眼は、そこではないからだ。

凄惨で不快な場面が続いた前作と異なり、血みどろのシーンは極端に少ない。決壊ダムが刺される場面と、徹三がサークルの男たちを返り討ちにする場面くらいだ。なのに、前作よりも激しく荒れ狂う嵐のようなドラマを見せつけられた。

158分の長丁場が、まったく長いと感じなかった。しかし、短いと感じたわけでもない。2時間半のすべてのシーンに、中身がぎっしり詰まっているのだ。過剰とも思えるナレーションの洪水が、一役買ってること言うまでもない。腹にずっしり堪えるような重みに、もうお腹いっぱい。

前半は「レンタル家族」という、見たことも聞いたこともない世界に唖然呆然。まったく理解不能だが、世の中いろんな人間がいるから、案外こういう仕事も成り立つかも、と思えてしまうリアルさもあった。ミツコとなった紀子を導く、いかがわしい組織のボス、クミコがすごい。さっきまでかわいく甘えていたと思ったら、時間切れなのに未練がましい客を蹴り上げる凶暴女に豹変する。意味不明な集団自殺に負けず劣らず、怖かった。

紀子とユカ、二人の娘に去られ、妻をも失った徹三。後半は、徹三が必死の捜索で二人の居所を突き止め、乾坤一擲の大勝負をしかける。昔の我が家を完全再現した家に、「レンタル家族」の客として、二人の娘を指名するのだ。彼らが向き合うクライマックスは、一秒たりとも目が離せなかった。

ミツコになりきっている紀子は、父をいつまでも「おじさん」と呼び続ける。まだヨウコになりきれていないユカは、部屋の片隅で震えているばかり。組織の男たちに襲われた徹三は、彼らを返り討ちにして、血だらけの居間で呆然と立ち尽くす。壮絶な展開に声も出ない。

次の展開はさらに驚いた。妻を演じていたクミコが、その場を収拾してしまうのだ。自分が何者かわからなくなっていた彼らにとって、役割が与えられるのはありがたいことなんだろう。「時間切れだけど延長したい」と泣きじゃくるユカの姿に、思わず涙が出そうになった。胸がざわついて仕方なかった。

ユカの希望を聞き入れて、和気藹々とすき焼きをつつく4人。本当にベタな家族だ。そこでは、紀子は紀子を、ユカはユカを演じている。徹三は、昔の自分を謝っている。以前はまともに口も聞かなかった彼らが、仲良し家族になりきっている構図は、見ていて複雑な気分になった。

彼らは確かに演技をしているのかもしれない。でも、それは決して嘘をついているわけでも、ドライなビジネスをこなしているわけでもない。みんな、そうしたくて明るく振舞っているのだ。異常な光景でありながら、この世でもっとも素直で幸せな家庭に見えてしまった。この不思議な感覚は、言葉ではうまく説明できない。

その後、ユカはユカもヨウコも捨てて家を出る。紀子は紀子に戻った。クミコはタエコになりきって、徹三の妻としてこれから生きていくのだろう。壮絶な経験をした彼らは、落ち着くべきところに落ちついたように見える。こんなラストは想定していなかった。

吹石一恵、吉高由里子、つぐみの3人は、これだけの難役をよくやり遂げた。特に、つぐみは衝撃的だった。強烈な女悪党クミコは、一生忘れられない。唯一まともな役柄の光石研も、正気を保つのが大変だったんじゃないだろうか。

とにかく、これまで観たどんな映画とも違うものを見せてもらった。世界中、どこを探してもこんなホームドラマはないと思われる。既存の言葉では表現しきれない映画だ。観終わって、完全脱力状態。もうヘロヘロ。参りました。

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cinema days 『映画な日々』|2008/03/10(月) 03:22

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