摩天楼を夢みて

何かの雑誌で「これぞ男の映画だ」と書いてあった。しかもアル・パチーノら名優たちが営業マンを演じている!DVDが置いてなくて、ビデオのコーナー探して見つけて借りてきた。
思えば、営業マンが主人公で、営業そのものを描いた映画って少ない。営業がドラマに登場するのは、単に登場人物の職業としてか、過酷な仕事の象徴としてかのどっちかだ。昔あったね、厳しいノルマと上司のイビリに耐えかねて、自殺しちゃう青春ドラマが。

でも、今の世の中、営業がないと成り立たないのは事実だ。いいものを作れば売れると思ってる技術屋は、社会の仕組みをわかってない。ものが売れる過程には必ず営業が介在する。どの業種でもだ。

営業の厳しさを描くのは誰だってできる。事務所の壁に成績のグラフ、口汚い上司、水でもかけてけんもほろろに追い出す客、この3点セットがあればOKだから。でも、そんなんばっかりじゃあ芸がない。この分野を描ける脚本家は少ないね。営業の現場に実際に身を置いたことがないと、本当の空気は再現できない。実はかなり難しい世界だ。

この映画も、さっきのステレオタイプに陥っているように見える。売り上げアップのために、アメとしてキャデラックを鼻先にぶらさげ、ムチとして解雇をちらつかせる。結果を出さなきゃ、とことん人でなしの扱いを受ける。客を口八丁で丸め込もうとしても、「帰ってくれ」の一言で、肩を落としてすごすごと引き下がらざるをえない。やっぱ営業って大変なのね。人のやる仕事じゃないわ。

この映画がそんじょそこらの凡百の映画と違うのは2点。一つは、そんな過酷な世界で生き抜こうとする男たちを、真正面から描いてることだ。文句ばっかり言うネガティブ野郎もいるけど、それが全部じゃない。立ちはだかる大きな壁を、己の機知と才気だけで乗り越えようとする男たちがいる。彼らの拠りどころは誇りとプライドだ。口もうるさいが、やることはやるのだ。彼らが悪戦苦闘して力尽き、膝折れる姿に涙する、世のお父さんは多いことだろう。

もう一つは、営業の別の顔を描いていることだ。人間を相手にしていると、思うように行かないことの方が圧倒的に多い。断りは日常茶飯事で、いちいち落ち込んでたら身が持たないと思っていても、やっぱりガクッとくる。バーでグチのひとつも言いたくなる。

しかし、ほしいものが楽に手に入っても、感激は少ない。苦労が多ければ多いほど、たまーにつかむ事のできる成功は、至上の快楽となるのだ。あのジャック・レモンの喜びようが、この仕事のすべてといっても過言ではない。映画はその後残念な展開となるが、そんなことどうでもいい。沈黙の5分間、無言のサイン、噛みしめる達成感。これは味わったことのない人には、絶対にわからない。断言できる。オレもこの世界にいるから。

アカデミー賞にもノミネートされたパチーノ。さすがにうまい。見事にカリスマセールスを演じきっている。まったく仕事に関係のない話から切り出し、すっかり人間関係を作ってから、一気にクロージングをかける。まさにプロ中のプロ。世の優績者たちは、多かれ少なかれこれをやっている。商品も大事だが、商品だけじゃ勝てないことの方が多い。最後は人間力なのだ。

ラスト近く、成果を挙げたレモンに敬意を表して、その一部始終に耳を傾ける姿も素晴らしい。本当の優績者は、他人の成功を喜べる人だと思う。

ただ惜しむらくは、ラストに向けての展開がネガティブなこと。「やっぱり営業ってひどいじゃん」ってなるのが、とても残念だ。そこはエンタテインメントだから、マメットもそうするしかなかったのかな。いや、残念でならない。

不思議に思うことがひとつ。あの業界は、アンケートのネタしか頼るつてがないのかね。ネタがなけりゃ、自分の足で探せばいいじゃん。白地開拓は営業の基本でしょうに。「ネタくれネタくれ」ばっかの態度には、首を傾げざるをえない。飛び込みがイヤなら、紹介でも頼めよ。彼らにはやることがもっとある。

あと、嘘八百並べるのも印象悪いね。今の時代はコンプライアンス守らないと、市場から追い出されちゃうよ。うまい言葉より誠実な態度の方が、よっぽど武器になると思うんだが。

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子供の頃から映画が大好き!いっぱい観てきたつもりですが、まだまだ勉強不足です。毎日映画だけ観て暮らすのが夢。


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