蝉しぐれ

こういう時代劇、最近少しずつ増えてきた気がする。積極的に観たいと思うジャンルじゃないんだけど、「たそがれ清兵衛」はよかった。予告編の感じもいいし、映画の日だし、気軽に劇場に入った。
最初のクレジットで、初めて監督が黒土三男だと知った。世の評判はどうなのか知らないが、オレにとってこの男は、「オルゴール」という邦画史上に残る駄作の監督でしかなかった。正直、大丈夫か?と不安になった。あんなクソみたいな映画を、また見せられるのか?

そんな強烈な先入観は、開巻早々に消えていった。静かに淡々と描かれる、下級武士の質素な生活ぶり。刀さえなければ、普通の人の暮らしとそう変わらない。こういうスローなリズムが、なんだか心地いい。オレも年をとったのかな。

しかし、緒形拳演じる父親が忠死するあたりから、胸を締めつける場面が続く。文四郎はえらいな。肩身の狭い思いをしながらも、歯を食いしばって耐え続ける。父親を罵倒されれば、多勢に無勢でも向かっていく。結局やられちゃうんだけど、必死でこらえる。若いのに気位の高い男だ。「武士は食わねど高楊枝」を実写で見せてもらった。

そんな彼がひそかに想う隣の娘、ふく。親の仕事で江戸へ行くことになり、離れ離れになってしまう。なんか中学生の頃を思い出しちゃったよ。好きだった子が転校しちゃって、もちろん結局それっきり。大人になってから再会するなんて、映画の中だけの話だ。もう今頃は、結婚して子供もいて、すっかりおばさんになってるんだろうな。現実なんてそんなもんさ。

でも、映画は違う。あの田舎娘ふくが、大人になれば木村佳乃なんだからね。しかも、殿様に寵愛されちゃって、子供もいるってんだから、せつなさ倍増です。社長の愛人みたいなもんだね。どうあっても平社員には手は出せません。

その初恋の相手が、今そこにある危機に陥っている。100%かなわぬ恋とわかっている。そんなことは求めない。命に代えても守る、ただそれだけだ。くーっ、男だねー。心意気だねー。このストイックさにしびれなければ、日本男児じゃない。

市川染五郎、「阿修羅城の瞳」に続いての時代劇だが、この清貧侍もよくあっている。安心して観ていられる、いい役者だ。

その親友に扮しているのが、今田耕司とふかわりょう。初めはものすごい違和感を感じた。お笑いの人が映画やドラマに出るのは珍しいことじゃないけど、この二人が真面目に演技してるのって、あんまり見たことなかったから。でも、観終わってみれば、なかなかよかった。染五郎と格の違いは歴然だが、うまく染五郎を立てながら、おいしいとこもちょこちょこある儲け役だった。

その他の配役も、よく見るとかなり豪華な布陣だ。出番は少なくても、出たいと思わせる脚本だったんだろうね。もしかして、黒土監督の人徳?彼に対する偏見を改めなければいけないみたい。ていうか、もう改まりました。次の作品も期待してます。

<おまけ>
主題歌が一青窈の「かざぐるま」。しかし、劇中で彼女の歌声が聴こえることはない。様々にアレンジされたメロディが、美しい四季の彩りを背景に何度も流れる。この使い方はキレイだ。いい曲だと思ったもん。これがセンスの良さなんだね。どっかの忍者映画とは大違いだ。

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子供の頃から映画が大好き!いっぱい観てきたつもりですが、まだまだ勉強不足です。毎日映画だけ観て暮らすのが夢。


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