バタフライ・エフェクト

2本続けて観ると1200円!ってんで、札幌・蠍座、「大統領の理髪師」に続いて連続鑑賞した。
まさに異色のタイムトラベルストーリー。こういうやり方もあったのねと、つくづく感心した。ジャック・フィニイの「ふりだしに戻る」は、ただ念じるだけで過去に行ったりしてた。この映画の主人公エヴァンも、タイムマシンを使わない点で、かなりそれに近い。彼の場合、日記を読むと字が震えだして、周囲の風景が飛び散り、その日に戻ることができるのだ。このアイディアは見事だ。

でも、これはあくまでアイディアに過ぎない。エヴァンは、自分が過去を変えられることを知り、取り返せない過ちの根本を取り除こうとするのだ。この映画がすごいのはここだ。

ケイリーの自殺を食い止めるために、その原因となった父親の性的虐待をやめさせる。ここまではよかった。目覚めてみれば、まるで「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のラストのように、現在がバラ色の生活に変わっている。女子寮を裸でうろついても怪しまれないどころか、向こうも裸見られても平気だってんだから、こりゃもう男の夢です(笑)。

しかし!現実はそううまく行かない。あっちを立てればこっちが立たずで、またもや取り返しのつかない事件が起こる。そして、それを未然に防ごうと、またもや過去へ戻って手を打つ。現在と過去を往復する度に、周囲の人間の人生がコロコロ変わってしまう。美少女ケイリーは娼婦にまで身を落とし、自閉症のレニーは精神病院に拘束される。一方、度を越した悪ガキ・トミーは高モラルな学生になってたりしてビックリ。この一人二役三役ぶりがまたすごい。

他人の人生を自分勝手に振り回すことに、いよいよ疲れたエヴァン。何度目かの人生で、みんなが幸せになり、自分だけが五体不満足になった時、「それでもいい」と諦めたんだろう。自分ひとりが苦悩を背負って死んでしまえば、すべては解決する、と。しかし、今度も歴史はそれを許さない。苦しむ母親を見て、彼はもう一度ジャンプする。

爆弾をなくせば問題は解決する・・・観ているこっちは、もうそんなことじゃうまくいかないだろうと思っているのに、彼は必死だからそれには気づかない。案の定、最悪の結果になってしまう。結局、ケイリーはエヴァンのせいで死ぬのだ。助けようと思ったのが、元の木阿弥だ。日記さえ、この人生では存在しなくなってしまう。八方ふさがりとは、まさにこのこと。

身障者の人生の時に、ケイリーから聞いた言葉、「あなたのそばにいたかったから、両親が離婚したとき、母親についていかずに残ったのよ」・・・彼は最後の最後に、最も辛い決断をする。

自分と出会わなければ、すべての悲劇は起こらない。最愛の人を守るには、これしかない。エヴァンは、幼少時代のホームビデオを使って、ケイリーとの出会いの瞬間に飛ぶ。そして一言、「あっち行け!近寄ったら殺すぞ!」。そして、「さよなら・・・」。このクライマックスは予想できなかった。あまりの悲痛さに、胸が引き裂かれた。完全にやられた。

オレもときどき夢想することがある。あの時に戻って、もっとこんな風に生きたら、もっと楽しく充実して生きられたんじゃないかって。もちろん、それでその後の人生が変わることまでは想像しない。想像がつかない。自分に都合のいい人生を思い描くだけだ。誰でもこれくらいのことは考えるんじゃないの?

この映画は、そんな甘い妄想を完膚なきまでに打ち砕く。そして、代わりに崇高なものを見せてくれる。美しい思い出を捨てても、その人を助けたいという、エヴァンの愛情の深さだ。雑踏の中ですれ違い、振り返ったケイリーがまた歩き出した瞬間に、エヴァンが気づいて振り返る。あの時、目があっていたら・・・。

もう、そんな空想は意味がない。二人は別々の道を歩んでいるのだ。そして、それを選んだのは、他ならぬエヴァンなのだから。

こんなに精緻に編み上げられた脚本には、そうそう出会えるものではない。エリック・ブレスとJ・マッキー・グルーバー、この二人の名前は覚えておかねばなるまい。いい映画を見せてくれて、ありがとう。

そして、感謝したい人がもう一人。劇場では、最後まで誰一人として席を立たなかった。大きなスクリーンで観られてよかった。蠍座の館主さん、ありがとう。

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Comment

[236]

こんにちは、この映画かなり面白かったですよね。
過去干渉物としては矛盾も少なくて、「デッドゾーン」並に余韻がありましたw
ディレクターズ・カット版の別エンディングがDVDには入るという情報なのでそれも楽しみっすw

[237]

>linさん
そうなんです!そうなんです!
この感じは「デッドゾーン」なんです。
あっちは、未来を変えるために現在に干渉する。
こっちは、現在を変えるために過去に干渉する。
そのために、身を切るような決断をするんですよね。
同じ感覚の人がいて、うれしいわー。
DVD買わないとイカンザキ!(笑)
アナザーラストも気になります。

[238]

お久しぶりです。
「バタフライ・エフェクト」見られましたか。
これは僕の中でもかなり評価の高い作品です。
あまり期待せずに劇場で観たのですが、見事にやられましたね。
ほんとにこれだけ緻密な脚本はなかなかないと思います。
個人的にはアシュトン・カッチャーの髭面がちょっと・・・でしたけど(苦笑)
髭無しの方がカッコイイのに勿体無いなと思ってしまいました。
他の作品も幾つかTBさせてもらいますね♪

[239]

>sinさん
よくできた脚本の映画は、やっぱりいいですね。
さすが6年かけただけあります。
アシュトン・カッチャーってよく知らなかったけど、
この1作で一気に株が上がりました。
髭面、確かにちょっと汚いですが、
休日に髭をそらない自分と近いものがあり・・・(笑)
毎日剃ると肌荒れちゃうんですよ。
たまに休ませないとね。
・・・って関係ない話ですね(笑)

[240]

こんにちは。
私もやっと見ることができました。
泣きはしなかったですけど、最後は目がウルウルしちゃいました…
これはスクリーンで見たかったです。

[241]

>さちさん
観れてよかったですね!
これは今年のベストを争う作品だと思います。
そういうのって、やっぱ劇場で観たいですよね。
でもDVDなら、劇場にはない特典があるからなー。
主な映画は劇場で観ちゃってるから、
いろんな特典映像見逃してるんだと思います。
それもちょっと残念よねー。

[242]

こんばんは。
トラックバックありがとうございました。
綿密に練られた脚本と、アッと驚くような展開にグイグイ引き込まれました。
この映画を観て、私の中でのアシュトン・カッチャーの印象もガラリと変わりましたね~。
セルDVDをゲットして、早く真のエンディングが観たいです。

[243]

>マイコさん
アシュトン・カッチャーって、
デミ・ムーアとくっついたんでしたっけ?
なかなかのツワモノだなあ。
オレなら出会う前に戻って、人生変えたいと思うけど(笑)
いろんなエンディングあるみたいだけど、
オレは劇場版で十分です。
アレで感動したクチなんで・・・

[244]

おはようございます
エターナルサンシャインを見たときも感じたんですが、記憶にまつわるストーリーって、結構前後が多いからちょっと難しめですね。でも、この映画はビックリしました。きっと誰しもが、あの時こうしていれば今頃は・・・って考えることがあると思う。そうゅうところをテーマに作ってあるから、なんだか過去をやり直そうとか思っちゃいけないんだなって思いましたね。

[245]

>ぷっちさん
ヤプログ不調の嵐で、コメントバック遅くなりました。
どうもすみません。
過去をやり直せたら、この主人公みたいにしちゃうんでしょうね。あれもう1回、これもう1回って。
でも、それやりだすとキリないんでしょうね。完璧な人生を求めちゃって。だから、今の人生をベストと思うしかないのかな?考えるなら、過去より未来のこと考えた方が前向きですね。

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子供の頃から映画が大好き!いっぱい観てきたつもりですが、まだまだ勉強不足です。毎日映画だけ観て暮らすのが夢。


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