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ゆきゆきて神軍

大学1年の時、社会学の単位をとるために、論文課題として出されたのが、この映画の感想文。何の前知識もなく、レンタルビデオ店にもなく、バイトの先輩が持っていたビデオを借り受けて観た。
それはもう言葉にならないほどの衝撃を受けた。想像を越えた戦場の悲惨さ。これが、調査を続けていくにつれて明らかになっていくドキュメンタリーのすごさ。そして、それにもまして衝撃的だった、奥崎謙三という男。このキャラクターには、唖然呆然、以後15年間頭から離れなかった。

今回、通販でDVDを購入して、届いたその日に嫁と観た。延々見せつけられる奥崎の強烈なキャラに、嫁はやはり辟易していた様子。ラスト、小清水の息子の射殺未遂記事が流れるにいたっては、完全にノックアウト。「なんなんだ、このオヤジ・・・」15年前の私と同じ感想である。

この映画、原監督が奥崎という類まれなる濃い老人を必死で追いかけていたら、この男の引っ掻き回しと執拗な問い詰めによる暴露劇が撮れてしまった、というのがホントのところじゃないか。でも、奥崎でなければこの事件の真相は明らかにならなかっただろう。それくらいしつこい。しつこい。しつこい。奥崎を敬う向きもいるようだが、ちょっと危険だと思う。もともとおかしなところのあった男が、戦争とその後自分が犯した殺人を通して、開花しちゃったんだね。

彼は、戦場で起こったことを隠そうとする輩を相手に、隠しちゃいけない、嘘をついちゃいけない、真実を語らなきゃいけない、という正論を盾に、心にやましいところのある人々を追いつめていく。今の法律では裁けないが、神の法律なら殺人罪だと言い張る。自分は犯した罪の償いはしている、という強みがあるから、強気で出る。

一方、彼に迫られた戦争犯罪人たちは、なんとか煙に巻こうとするが、巻ききれず自白する。謝罪する。泣く。これを見て思ったのは、彼らは悪いことをしたかもしれないが、戦場というものは人間の良識や良心をそこまでマヒさせ、紙くずのように捨てさせてしまうものなのか、という恐ろしさである。

戦後40年たっても、彼らは当たり前のように「黒豚」「白豚」という言葉を口にする。日常会話の中に突然非日常が、底なしの深くて暗い穴のごとくぽっかり口を開ける。考えられない怖さがフィルムに焼きつけられている。すごい映画である。

その中でも、唯一平然と嘘をつき通し、自分の罪を否定した小清水は、間違いなく巨悪だろう。食人の事実を隠すために、部下に部下を射殺させ、最後にとどめをうった小清水。その口調は、自分を正当化するために必死になっているというより、仕事を全うする良き指揮官であろうとした男の、後悔まじりの回顧談だ。穏やかで達観していて説得力がある。本当の悪人というのは、こういうヤツなのかもしれない。

小悪党はすべて、奥崎の前に崩れ落ちた。小清水は奥崎を突き返した。あの奥崎でさえ、いつもの手法は通じなくて、結局、直接的手段に出た。果たして、真相は法廷で明らかになったのだろうか。

奥崎の行動は、神の法律に突き動かされていると本人は言うが、単に事件を起こしたいだけなんじゃないか、と傍から見てると思う。カメラの前や、人に注目されている時の奥崎は、その持ち前のキャラがパワーアップする。人とは違う自分の行動倫理に自信があって、それを映されていることに快感を覚える。エスカレートする。この暴露劇も、カメラがあったからこそなしえたのかもしれない。

ドキュメンタリーというのは大抵、訴えたい何かを現実の人の言葉や行動を通して実像化するものである。この映画は、初めからあんな経過、あんな真実、あんな結果を予測して撮っていたわけでない。事実は小説より奇なり、とよくいうが、この映画が創作なら三文小説だ。先の予測ができないのが人生であり、そのものすごく濃い実例を、ギューッと2時間に圧縮したのが、この「ゆきゆきて神軍」なのである。こんな映画、撮りたいと思っても撮れるものではない。

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子供の頃から映画が大好き!いっぱい観てきたつもりですが、まだまだ勉強不足です。毎日映画だけ観て暮らすのが夢。


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