アンダーカヴァー

男兄弟をテーマにした映画って、最近だと「マイ・ブラザー」と「ザ・ファイター」が思い浮かぶ。前者は本作と同様、優秀な兄とダメダメな弟が登場する。弟が後半いい人に変身するのも似ているかな。後者は逆で、ダメダメなのが兄、真面目なのが弟。その弟を演じたのは、本作にも登場するマーク・ウォルバーグだ。
彼は律儀そうな顔してるので、本作でも真面目な兄貴の方を担当している。警察署長でもある父の教えに従って、エリート街道をまっしぐらに進む警官ジョゼフだ。
一方、厳格な父親や真面目一辺倒の兄貴に反発し、水商売の世界で頭角を現すのが弟のボビー。こちらは、いかにも不良顔のホアキン・フェニックスが演じている。坊主憎けりゃ名前まで憎いってわけで、母方のグリーン姓を名乗っている。犯罪に手を出してはいないものの、ドラッグは日常茶飯事だし、自分の店に悪党がたむろすることも珍しくない。
こんな兄弟だから、お互いよく思ってなくても不思議じゃない。ロシアの麻薬組織を潰すために、父や兄から協力を要請されても、ボビーは「んなことできるか!」と一蹴する。ましてや、自分の店にガサ入れまでされたら、兄弟喧嘩勃発も当然だ。こいつら、ホント仲悪いわ。
それでも血のつながった兄が撃たれて瀕死の重傷を負えば、心配になって病院に駆けつけもする。ボビーって、ワルぶってても、ワルにはなりきれないヤツなのだ。
さらには兄を襲った張本人のニジンスキーが、ボビーが身内とは知らずに、次は署長を殺るとバラしてきた。いくらろくでなしな弟でも、これには黙っていられない。父には内緒で、敵のドラッグ精製工場潜入作戦を実行するのだ。ジッポに仕掛けた盗聴器が見つかって万事休すとなるが、待機していた警官隊が突入し、連中を一網打尽にする。体中傷だらけのボロボロになったけれど、大金星だ。
しかし、裏社会から狙われる立場になったボビーは、裁判まで護衛つきで守られる生活に。不便を強いられるけど、父親からの覚えはめっきりよくなった。ボビーって実は、お父さんに認められたかったんだよね。でも兄貴ほど優秀じゃないコンプレックスから反抗してたんじゃないかな。「警官になれ」なんて言われても断ってたけど、内心うれしかったはずだ。
そんな父親も、脱走したニジンスキーの襲撃に遭い、息子を守ろうとして凶弾に倒れる。父親の愛情を感じられるようになった矢先の出来事に、愕然とするボビー。ここにきて兄弟は抱き合い、和解を果たし、父のために結束して戦うことを誓い合う。そしてボビーは、父の言葉に従って、警官になることを決心する。
警察署での兄弟の会話が印象的だ。出来のいい兄貴が、警官になった弟に向かって、「お前に嫉妬していた」と告白するのだ。自信がなく父のいいなりだった自分と比べて、自由なお前が羨ましかった、と。冒頭、あれだけ反目してたとは思えない、本音の吐露に感動した。
その後は、兄弟率いるNYPDによる悪党殲滅作戦の決行だ。激しい銃撃戦といぶり出しの末、ボビーは宿敵ニジンスキーを射殺する。
ラストは感動の連続だ。現場での銃声に腰が抜けてしまったジョゼフは、危険を避けるために事務職へ異動を願い出るが、そんな兄に対しボビーは「兄さんの自由だ」と声をかける。警察学校を主席で卒業した弟は、本名のグルジンスキーで名前を呼ばれ、死んだ父親と偉大な兄の名前も一緒に紹介される。二人が並んで座り、心を固く結ぶラストに、観ているこっちも熱くなった。
兄弟を演じた二人もさることながら、父親に扮したロバート・デュヴァルの力強い演技も素晴らしかった。甘えに対してはこれ以上ないくらい厳しいのに、潜入捜査で負傷した息子には優しく接する。その姿に、理想の父親像を見たような気がします。
そして本作にはもうひとり、人生を変えられた人物が登場する。ボビーの恋人アマダだ。心底惚れた男にずっとついていくつもりだったけど、男は自ら危険に身を投じていく。止めたくても止められず、耐えられなくて去っていく女。お気に入りのエヴァ・メンデスが、ボビーに翻弄されるいい女を熱演していた。ますます好きになりました。
工場潜入のサスペンス、豪雨の中のカーチェイス、クライマックスの銃撃戦など、アクションとしての見せ場もちゃんとあるのだが、それよりも何よりも、兄弟、親子、男女の濃密なドラマに圧倒された。これは間違いなく傑作だ。劇場で観ておくべきだった。
そのとおりと思ったら、ポチッ!
彼は律儀そうな顔してるので、本作でも真面目な兄貴の方を担当している。警察署長でもある父の教えに従って、エリート街道をまっしぐらに進む警官ジョゼフだ。
一方、厳格な父親や真面目一辺倒の兄貴に反発し、水商売の世界で頭角を現すのが弟のボビー。こちらは、いかにも不良顔のホアキン・フェニックスが演じている。坊主憎けりゃ名前まで憎いってわけで、母方のグリーン姓を名乗っている。犯罪に手を出してはいないものの、ドラッグは日常茶飯事だし、自分の店に悪党がたむろすることも珍しくない。
こんな兄弟だから、お互いよく思ってなくても不思議じゃない。ロシアの麻薬組織を潰すために、父や兄から協力を要請されても、ボビーは「んなことできるか!」と一蹴する。ましてや、自分の店にガサ入れまでされたら、兄弟喧嘩勃発も当然だ。こいつら、ホント仲悪いわ。
それでも血のつながった兄が撃たれて瀕死の重傷を負えば、心配になって病院に駆けつけもする。ボビーって、ワルぶってても、ワルにはなりきれないヤツなのだ。
さらには兄を襲った張本人のニジンスキーが、ボビーが身内とは知らずに、次は署長を殺るとバラしてきた。いくらろくでなしな弟でも、これには黙っていられない。父には内緒で、敵のドラッグ精製工場潜入作戦を実行するのだ。ジッポに仕掛けた盗聴器が見つかって万事休すとなるが、待機していた警官隊が突入し、連中を一網打尽にする。体中傷だらけのボロボロになったけれど、大金星だ。
しかし、裏社会から狙われる立場になったボビーは、裁判まで護衛つきで守られる生活に。不便を強いられるけど、父親からの覚えはめっきりよくなった。ボビーって実は、お父さんに認められたかったんだよね。でも兄貴ほど優秀じゃないコンプレックスから反抗してたんじゃないかな。「警官になれ」なんて言われても断ってたけど、内心うれしかったはずだ。
そんな父親も、脱走したニジンスキーの襲撃に遭い、息子を守ろうとして凶弾に倒れる。父親の愛情を感じられるようになった矢先の出来事に、愕然とするボビー。ここにきて兄弟は抱き合い、和解を果たし、父のために結束して戦うことを誓い合う。そしてボビーは、父の言葉に従って、警官になることを決心する。
警察署での兄弟の会話が印象的だ。出来のいい兄貴が、警官になった弟に向かって、「お前に嫉妬していた」と告白するのだ。自信がなく父のいいなりだった自分と比べて、自由なお前が羨ましかった、と。冒頭、あれだけ反目してたとは思えない、本音の吐露に感動した。
その後は、兄弟率いるNYPDによる悪党殲滅作戦の決行だ。激しい銃撃戦といぶり出しの末、ボビーは宿敵ニジンスキーを射殺する。
ラストは感動の連続だ。現場での銃声に腰が抜けてしまったジョゼフは、危険を避けるために事務職へ異動を願い出るが、そんな兄に対しボビーは「兄さんの自由だ」と声をかける。警察学校を主席で卒業した弟は、本名のグルジンスキーで名前を呼ばれ、死んだ父親と偉大な兄の名前も一緒に紹介される。二人が並んで座り、心を固く結ぶラストに、観ているこっちも熱くなった。
兄弟を演じた二人もさることながら、父親に扮したロバート・デュヴァルの力強い演技も素晴らしかった。甘えに対してはこれ以上ないくらい厳しいのに、潜入捜査で負傷した息子には優しく接する。その姿に、理想の父親像を見たような気がします。
そして本作にはもうひとり、人生を変えられた人物が登場する。ボビーの恋人アマダだ。心底惚れた男にずっとついていくつもりだったけど、男は自ら危険に身を投じていく。止めたくても止められず、耐えられなくて去っていく女。お気に入りのエヴァ・メンデスが、ボビーに翻弄されるいい女を熱演していた。ますます好きになりました。
工場潜入のサスペンス、豪雨の中のカーチェイス、クライマックスの銃撃戦など、アクションとしての見せ場もちゃんとあるのだが、それよりも何よりも、兄弟、親子、男女の濃密なドラマに圧倒された。これは間違いなく傑作だ。劇場で観ておくべきだった。
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