アポカリプト

今回も、ぐいぐい引き込まれる、ゆるぎない2時間だった。ここまで屋台骨がしっかりしていて、ぶれない映画も最近珍しいのではないか。
シンプルなストーリーのアクション映画だが、まず褒めておきたいのは脚本だ。話のつなぎ方や伏線がとてもうまくて、あまりの違和感のなさに唸らされる。
例えば、生贄寸前のジャガー・パウを救った日食。こんなの突然出てきたら、話がうますぎる。しかし、事前に病の少女に予言させることで、それを和らげるだけでなく、ジャガー・パウに神がかったものまで感じさせている。予言はその後もうまく使われていて、見事というしかない。
残酷だけど冷静なゼロ・ウルフ。ジャガー・パウがうまく逃げただけなら、彼が執拗に追う必要はない。そこで、彼の息子を登場させ、死に物狂いのジャガー・パウに殺させた。冷静なボスが狂ったように追跡するのに、これ以上の理由があるだろうか。
こういうのを、うまい脚本というのだろう。簡単にできそうで、なかなかできない技だ。
脚本の素晴らしさは、魅力的・個性的な登場人物にも現れている。
脇でもっとも光っていたのは、タネなしブランテッド。冒頭からバカにされっぱなしのダメダメキャラだ。ジャガー・パウにコケにされ、嫁の母親から罵倒され、信頼した族長にも騙されて、観ていてちょっとかわいそうになる。
でも、こいつが後半光る働きするんだ。死の行軍で、崖から落ちかけた仲間を、一人踏ん張って助けたのは彼だ。マンハントで矢に撃たれやられたと思いきや、止めを刺されそうなジャガー・パウを助けて、反撃のチャンスを与えたのも彼だ。最後の「逃げろ」の一言にグッときた。だって、あいついじめられてたんだよ。なのにさ・・・いいヤツじゃねーか、グス。
ジャガー・パウの奥さんもすごい。息子の裂傷をアリの口で縫ったり、穴に飛び込んできた狂猿を叩きのめしたり、身重なのに壁を登ろうとしたり(そして落っこちたり)。しまいには水中出産だぜ。最初はダンナにオンブにダッコな嫁に見えたのに、やっぱ女は強いなー。助けに戻ってきたジャガー・パウの驚き、すごくよくわかる。
悪役だって徹底している。ゼロ・ウルフの貫禄もすごかったが、その部下の嫌らしさも半端でない。とにかくクソみたいなヤツ。絶対こいつ殺してほしかったもの。死闘の末にやっつけた時は、本当にすっきりしたもの。
そして、主役のジャガー・パウだ。捕まってしまってからは、なすすべもなくもどかしかった。でも、マンハント開始後、ジグザグに走り出す彼を観て、思わず拳を握ってしまった。自分に刺さった矢じりを折って、ゼロ・ウルフの息子に刺した時は、思わず「よしっ」と小声を発してしまった。
観客をぐいぐい引っ張っていく一方で、滝に飛び込む直前は、観客と一緒に躊躇する。森に入って、反撃を決心してゆっくりと振り返る場面では、一緒になって「ここはオレの森だ!」と、心の中で叫んでしまった。こういう「タメ」のシーンが、主人公への感情移入をしやすくしているのだ。
その後のジャガー・パウの活躍は、まさにカタルシスの一言。蜂の巣作戦、毒ガエルの吹き矢作戦、そしてバクの罠作戦(この伏線も見事!)と、体力+知力の攻撃が矢継ぎ早に繰り出され、決まるたびに思わずガッツポーズしてしまう。
さらには、ジャガーやヘビも敵を倒して、運も味方してくれている。こんなところも、主人公の魅力を際立たせているのだ。
一人の戦士の、多勢に無勢な闘いを描いた作品だが、同様のテーマの「300」にあったケレン味は一切ない。でも、観ていて燃えたのは断然こっちだ。リアルな画に、よく練られた脚本、緩急自在のテンポ、印象的なキャラ。これだけ揃った命がけのアクション映画だ。面白くないわけがない。
メル・ギブソン、またしても評価を上げたな。アカデミー賞の「ブレイブハート」より、数段完成度高いよ、これ。
そのとおりと思ったら、ポチッ!
シンプルなストーリーのアクション映画だが、まず褒めておきたいのは脚本だ。話のつなぎ方や伏線がとてもうまくて、あまりの違和感のなさに唸らされる。
例えば、生贄寸前のジャガー・パウを救った日食。こんなの突然出てきたら、話がうますぎる。しかし、事前に病の少女に予言させることで、それを和らげるだけでなく、ジャガー・パウに神がかったものまで感じさせている。予言はその後もうまく使われていて、見事というしかない。
残酷だけど冷静なゼロ・ウルフ。ジャガー・パウがうまく逃げただけなら、彼が執拗に追う必要はない。そこで、彼の息子を登場させ、死に物狂いのジャガー・パウに殺させた。冷静なボスが狂ったように追跡するのに、これ以上の理由があるだろうか。
こういうのを、うまい脚本というのだろう。簡単にできそうで、なかなかできない技だ。
脚本の素晴らしさは、魅力的・個性的な登場人物にも現れている。
脇でもっとも光っていたのは、タネなしブランテッド。冒頭からバカにされっぱなしのダメダメキャラだ。ジャガー・パウにコケにされ、嫁の母親から罵倒され、信頼した族長にも騙されて、観ていてちょっとかわいそうになる。
でも、こいつが後半光る働きするんだ。死の行軍で、崖から落ちかけた仲間を、一人踏ん張って助けたのは彼だ。マンハントで矢に撃たれやられたと思いきや、止めを刺されそうなジャガー・パウを助けて、反撃のチャンスを与えたのも彼だ。最後の「逃げろ」の一言にグッときた。だって、あいついじめられてたんだよ。なのにさ・・・いいヤツじゃねーか、グス。
ジャガー・パウの奥さんもすごい。息子の裂傷をアリの口で縫ったり、穴に飛び込んできた狂猿を叩きのめしたり、身重なのに壁を登ろうとしたり(そして落っこちたり)。しまいには水中出産だぜ。最初はダンナにオンブにダッコな嫁に見えたのに、やっぱ女は強いなー。助けに戻ってきたジャガー・パウの驚き、すごくよくわかる。
悪役だって徹底している。ゼロ・ウルフの貫禄もすごかったが、その部下の嫌らしさも半端でない。とにかくクソみたいなヤツ。絶対こいつ殺してほしかったもの。死闘の末にやっつけた時は、本当にすっきりしたもの。
そして、主役のジャガー・パウだ。捕まってしまってからは、なすすべもなくもどかしかった。でも、マンハント開始後、ジグザグに走り出す彼を観て、思わず拳を握ってしまった。自分に刺さった矢じりを折って、ゼロ・ウルフの息子に刺した時は、思わず「よしっ」と小声を発してしまった。
観客をぐいぐい引っ張っていく一方で、滝に飛び込む直前は、観客と一緒に躊躇する。森に入って、反撃を決心してゆっくりと振り返る場面では、一緒になって「ここはオレの森だ!」と、心の中で叫んでしまった。こういう「タメ」のシーンが、主人公への感情移入をしやすくしているのだ。
その後のジャガー・パウの活躍は、まさにカタルシスの一言。蜂の巣作戦、毒ガエルの吹き矢作戦、そしてバクの罠作戦(この伏線も見事!)と、体力+知力の攻撃が矢継ぎ早に繰り出され、決まるたびに思わずガッツポーズしてしまう。
さらには、ジャガーやヘビも敵を倒して、運も味方してくれている。こんなところも、主人公の魅力を際立たせているのだ。
一人の戦士の、多勢に無勢な闘いを描いた作品だが、同様のテーマの「300」にあったケレン味は一切ない。でも、観ていて燃えたのは断然こっちだ。リアルな画に、よく練られた脚本、緩急自在のテンポ、印象的なキャラ。これだけ揃った命がけのアクション映画だ。面白くないわけがない。
メル・ギブソン、またしても評価を上げたな。アカデミー賞の「ブレイブハート」より、数段完成度高いよ、これ。
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『アポカリプト』観たー!
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この映画のキャッチ
「マヤ文明、崩壊前夜」
ストーリーはシンプル
少数部族の、自身(アイデンティティ含む)をまもる戦い
時代考証は今判明している(とされている)歴史と違う部分もあり
マヤ人と少数部族の関係
判明してな...
すばらしいと思いました。
今日1日の最後にあなたの感性を感じれて、幸せな気分で眠れる事、感謝します。